Ｂ



花はいない

駱駝もいない

もはや生き物とよべるものは

視界にうつらない


見わたすかぎりの砂

暴力的な太陽

息をするたび灼熱の酸素が

肺を侵す


それでも我はゆく

焼けただれた砂々の上を

たよるべきしるしは

しばし冷却の夜にすがたを見せる

かの南十字星


旅人らが求める或る慰安

かのオアシス

要らない

癒しを請うほど落ちぶれてはいない

寄り道する間も惜しむほどに

たどりつきたいのは　

嗚呼　我を導き世に夜に咲く

かの南十字星


二百年のかなたより

照らしておくれ　わが旅路を

ほの赤きエータカリーナの雲

煙のコールサック　乳の河　雪玉のオメガ

知るものか　我にはただ

風に揺れぬクロスがあればいい

その交差に抱かれたくて

我は黄砂を進みゆく


だなんて　ねえ　

大仰な男は嫌いかい

うまく伝えられないけれど

要するにこんな感じなんだよ

そばにいてくれるおまえに今も


大げさなのはＢ型のせいさ

悪いな　まあいい

公園にでも行こう

俺の南十字星