青と邪念とタンポポと



流れる雲を見ていた

目的もなく 条理もなく

セメントの海で息継ぎをする

不遇なタンポポだけがいた

校舎の屋上から見上げる空は遠く

やさしく問いをつき返すから

チャリのスポークを煙草のようにくわえ

流れる雲をただ見ていた


大人の醜さを見透かしてしまう

不毛なエネルギーが嫌だった

仲間の視線に強がってみせる

己の弱さを恥じていた

空がどこまでも青く青いので

柵越えの果ての血の赤が

天に調和するとは信じ難かった


認めさせるとうそぶいた

身勝手な妄想を夢と呼んだ

大胆なことをやってのける日々が

無謀と勇気を混同させた

先人の憂いごとを何頁もめくり

人生を知った気になったところで

少女の微笑みと残酷さの前には

あまりにもすべてが無力だった


自由であり 自由ではなかった

滑稽なくせに 笑えなかった

あるのはただ広がるばかりの青と

ありあまる邪念とタンポポと

言葉にできない或る異物


屋上にはまばゆい闇がそそぎ

心はスキップしながら絶望していた

耳が何処にも落ちてないので

スポークを鋭角に折り曲げた

流れる雲が悲しかった