朝日まで



ありったけの金を寄せ集めて安物の酒を買い込んだ

狭いアパートと語り合う仲間の他には何もいらなかった

仲間の一人が仕入れてきた珍しい煙草を５人で分けて

俺達は一つのジッポーの火に煙草の先を合わせた

気づくといつも同じ顔ぶれのくせに話は尽きず

誰かがかけたテープが悲しい曲で始まったりすると

みんなで一斉に無口になったりしたけれど

煙草を買った奴以外の４人が「まずいな」って言うと

何だかおかしくなってみんなで吹きだした


学校とジーンズと車と女とロック

けなしたり憧れたりしながら天井を見つめて

何もかもに無力さを痛感しつつ将来を夢見た

５人分合わせても１００点に満たない答案を

灰皿の上で燃やしきった後で

仲間のひとりが無茶な夢を鼻息も荒く語れば

迷わず缶ビールをぶつけ合って乾杯をした

もしもこの世界を現実と理想に分けるならば

少なくとも俺達は理想に生きると誓い合うように


貧しさの淵でバイトに命をかけてるような俺達には

しょせん贅沢でわがまなな美人には縁がなかったけれど

誰もが大人の駆け引きなんて憎みきっていたから

いつまでも無骨さの谷間であがくばかりだった

仲間の一人は彼女とのすれ違いに悩み

ある一人は小学生みたいな片想いに自分を責め

またある一人は友達宣告を受けて苦しみにもがき

残る一人は三角関係の渦の中で葛藤を抱き

そして俺は昔の女をただ忘れられずにいた


同情や慰めや甘えを並べあう中にはなりたくないと

誰もが無言のうちに分かっていたから

互いにかけ合う言葉も見つからずに自分を探していた

冬の朝日が差し込むころ俺たちは毛布にくるまって

つぶした空缶の山にそれぞれの祈りを込めた

この部屋は逃げ場じゃなく真実を育む砦だ

半端な支え合いなどいらない貪欲な夢達の砦だ

誰かが倒れたなら俺がその骨を拾う

だから俺が倒れたときはその骨を頼む

もしそれが前のめりに倒れた骨であればだ

そうして朝日のまぶしさに目を細めているうちに

いつのまにか俺達は眠りに落ちた