ベランダ バルコニーなんて おしゃれなものじゃなく ただの狭いベランダだけど ベッドを抜けだして 夜明けまえの空気を吸おう 景色なんて見えない ビールケースを置いただけの アパート二階のベランダだけど 並んで腰かけて 明け方の月をながめよう 話しているだけで唇から まっ白な息がこぼれるなんて やっぱりこの時間は冷えるね なるべくこっちに寄って 一枚の毛布に くるまれるくらいに 眠っていただけなのに こんなにお腹がすくなんて しょうもない生き物だよな カップヌードルしかなかったけど 少しはあったまるから いっしょに食べよう ふがいない男でごめん 何者かになれると思っていた 過去の日々はまぼろしだった 身の丈に合わない夢にきみを ずいぶん付き合わせてしまったね しょぼい朝でごめん でもいま分かったんだよ ベランダのカップヌードルが こんなに美味しいのは きみと食べているからだ 何者にもなれなかったぼくだけど きみとなら家族になれる気がする きみとならあたらしい夢を 育ててゆける気がするんだ この小さなベランダから ふたりの朝をはじめよう ごらん　旧庁舎のビルの向こう 空があかるみだしている