永遠



命知らずの友を二人のせ北へ走る

「色気もねぇし、走るか」がいつもの合言葉

街灯もない砂利道につっこむと

安物のジンが胃の中から脳をつつく

日常から抜け出して鳥になりたいと

欲望にハンドルをきらせて

郊外の小さな飛行場に着いたのは午前二時だったから

人工鳥たちはみな眠っていた


星が見える

無数の星が散らばっている

おれたちはひとつの青い星の上に立ちながら

同時に様々な色の星たちを見ている

星達の隙間にある黒く巨大な空間は

いったい何なのだろう　どこまで続いているのだろう

無限とは何　思考が届かない

永遠とは何　怖くなる

おお　なんだこの恐怖心は

死か　それとも生に対してか

一瞬さ　宇宙よ　あんたに比べたら一生なんて一瞬

永遠なんてのんきなこと言ってられないんだ

ああ　たのむから

押しつぶそうとしたり吸い込もうとしたり

おれを揺さぶるのはやめてくれ

ああ　何ができるというんだ

見てみろ　こんなにもおれは小さいじゃないか

見てみろ　あまりにも命は短いじゃないか

何ができるというんだ！


人間が選ばれし生き物だなんて冗談じゃない

大自然の息吹ひとつも感動させられないくせに

一生　物や金に縛られて生きていくなんて

この宇宙から見ればなんて小さなことだろう

おれたちは何に戸惑わされて生きているのか

今この瞬間でさえ自然の流れは

誰にも止められぬ強く大きな力で

進みつづけているというのに

ああ　おれひとりが生きおれひとりが死んでも

時は何ごともなく進みつづけてゆく

ああ　ああ　取り残されてしまう

この激しい営みから


「泣いてんのか」と友のひとりが尋ねる

「酔いがまわってきたんじゃねえのか」もうひとりが尋ねる

と　得体のしれない火がぽっと心にともった

彼らが傍らにいることに

無限の意味を見つけ出した気がした

ともすれば小さく弱いこの人間の中にこそ

永遠というものはあるのかもしれない

この宇宙でもっとも無力な

おれたちの中にこそ


「夜明けまで走るか」とまた車に乗り込む

行くあてのないおれたちは日が昇る方向に走る

自然の流れを逆流することができなくとも

人の心の汚さに逆らって生きてゆこう

宇宙の法則ひとつ変えることができなくとも

この星の上　誰かのために生きてゆこう

街に踏みつけられても信じていたいものがある

心分かち合える　いとしい友よ