原色の一日 はっきり言いなさい 先生に問い詰められて ぼくは口ごもった ベージュ色のカーテンがなびく 教室のかたすみで はっきり言いなさい そう尋ねられても ぼくは答えなかった はっきり答えた子たちから 順に帰らされても 口を開けなかったのは 言いたくなかったのではなく 白とも黒ともつかず とはいえ灰色とも呼べぬ 微妙な色合いの思いを 名づけられなかったから 「さあ　イエスかノーか？」 司会者の問いかけに はっきり札を挙げる出演者たちと すっきりしている視聴者たち もじもじしているヤツなんて だれも望んでいない ひとの気持ちや意見は常に 二色刷りだろうか グラデーションのどこかにある 名づけられない思いは 時間が足りないと 空気が読めないと 切り捨てられてゆく 白か黒か 赤か青か黄か緑か 即座に答えられた人の 意見は讃えられ 答えを探している人の 気持ちはなかったことにされて 原色の一日は 今日も暮れてゆく