灰色の愛



君は白が好きだという

白は他の色と混ざったときに

相手の色を少し優しくするからと


僕は少しだけ悲しくなる

それならば真白い君は

いったい何から優しさをもらえるのかと


白の持つ不思議な力

雪

白紙

君の肌

ビートルズのホワイトアルバム

白夜

クチナシ

波

告白

白はただ純粋であるよりも

いくぶん危うい魔力で人を魅了する


そして白であるそのもの自体は

白であるが故の悩みを抱え

白なりの重圧に耐え

そして悲しくも

己が白であることを知らない


僕はいつも白いものに憧れてきた

白き人に恋をした

そのつど黒ずんでしまった僕の手が

それを汚すことを恐れた


白き人をそのままでいさせたい己と

半ば黒く染めてやろうとする己が

常に戦うのだ

触れずにいたら白き人は去り

ただ白く美しい思い出が残る

そしてこの手で幸せにせんと触れるたび

互いは交じり合い

澱んだ灰色となる



灰色の愛



君は白が好きだという

白は他の色と混ざったときに

相手の色を少し優しくするからと


僕は少しだけ悲しくなる

それならば真白い君は

いったい何から優しさをもらえるのかと


僕は君に触れることが怖い

汚れたこの手で君を染めてしまうことが怖い

情けない臆病者だ

それでも僕は君が好きだ

指をくわえて白き君を

眺めているだけの男にはなれそうもない

だから申し訳ないのだけれど

僕は君を抱きしめる

強く君を抱きしめる


まことに勝手な言い分だけれど

僕は灰色の愛で白を超えようとしている

それが僕の選んだ

エゴイスティックな結論だ


もし君がそばにいてくれるなら

生まれ持つ君の白を

それよりやわらげることはできないかもしれないけれど

僕なりに君の幸せを探す

鮮やかさも派手さもない

モノクロの未来かもしれないが

必ず君の幸せを探す

いつか君がこの灰色を

白より愛してくれる日まで