花びら



「思い返してみると・・・・・・」

少年Ｚ・Ｐはベッドと同化して天井を見つめた

「本音と逆のことを口にした時ばかり

ほめられてきたような気がする・・・・・」


地獄に落ちる勇気がない

天国に召される自信がない

現実を受け止めるだけの力が

辞書の入ったカバンの重さほど足りない

Ｚ・Ｐ　高校３年生　得意科目　倫理

誰にも言えない夢がある


「振り返るのは嫌だけど・・・・・・」

受付嬢Ｖ・Ｑは電車の窓から自転車置場を見た

「自分を裏切った時ばかり

人に好かれてきたような気がする・・・・・・」


久しく怒られたことがない

心から愛されたことがない

無料サンプルのファンデーションは

涙を少しも濁らせない

Ｖ・Ｑ　英検２級　現在減量中

胸のボタンは知恵の輪でできてる


嘘が本当なら誤答で生きたい

優しさが海なら溺れてみたい

理性の支配者にはなれないけれど

欲望の奴隷にもなれない

誰も　淋しい


世に咲き乱れる花々の

茎に手を添え引き抜いてみれば

微笑む花びらが美しいほど

根は泣きすがっているかもしれない