夢を型にはめて作り上げた主義で
他の主義の足をすくって笑みを浮かべるのかい
己の名を傷つけぬ最良の道を見つけ出して
前も後ろも見ずに逃げ出してゆくのかい
金をばらまいて次に座る椅子の位置は気にしても
この国の未来なんて気にしないというのかい
囲いの外はすべて適とみなし 野次を飛ばしあって
愛も語ることなく眠りこけるのかい
君に会いたい
果てしない地平線の向こうは火薬を抱えて
罪のない地平線のこっち側を狙っているのかい
憎みつづけることだけを心に刻み込まされて
その心を銃の中に刻み込んでゆくのかい
地球という星の上で共に生きていることも忘れ
その意味を知ることもなく武器に口づけるのかい
傷を負った兵士達は夜ごと夢の中で
うつろに消えゆく想いをあたためるのかい
君に会いたい
文明の足音を聞きもせず 満たしきれぬ心むくまま
また新しい物質で文明を壊してゆくのかい
怠けゆく心はとどまるところを知らず
快楽のためならどんなことも可能にするのかい
発明とは人の体を滅ぼすことで
発展とは人の心を蝕むことなのかい
遠い昔に忘れ去ったものを蘇らせようともせず
人の心も機械仕掛けになってしまったのかい
君に会いたい
子供達は土の味も知らず 冷たい画面にとらわれ
外に出れば陽射しに目をやられてしまうのかい
繰り返しばかり続く旋律を奏で
音をはずせば皆に笑われてしまうのかい
一人一人に渡される紙に書かれた数字で
先の先まで閉ざされてしまうのかい
生まれ持った才能も宝の持ちぐされで
天才かもしれない少女は凡人を志すのかい
君に会いたい
弱い者達を守るはずの強い者達は目先にとらわれ
弱い者達を踏みつけても平気なのかい
誰もが自分を守るために良心をごまかして
慈善も偽善に形を変えてしまうのかい
年老いた人達は街からつまはじきにされ
恋することも許されぬというのかい
光を失った人にさえ誰も手をさしのべずに
目をそらすことを無意識に覚えたのかい
君に会いたい
命の重さを知らぬ若者が人の命を踏み躙り
自分の罪の重さが分からないのかい
日常的な過ちに仲間意識を重ね合わせ
みんな親のせいだと吐き捨てるのかい
心まで薬漬けにして幻想に逃げ込んで
目の前の現実さえ受け止められないのかい
人目をはばかって罪を重ねても
月が裁きを下すことを忘れているのかい
君に会いたい
気紛れに一夜を交わしただけ ただそれだけで
もう恋のすべてを知ったつもりでいるのかい
飾りばかりに気をとられて 人の愛の真価なんて
誰も見向きもしなくなったのかい
自分の利益を少しでも考えたら それは下劣な愛だと
今まで誰からも聞かなかったのかい
愛することと愛されることで何もかも見失って
無様に生きてゆくことが恥ずかしいのかい
君を抱きたい
哀しみの叫びとやるせない眼差しで
小さな生き物達は何か訴えているのかい
わがままと自分勝手に気がつかずに
調和を乱しつづける愚か者達を責めているのかい
ささやかな息吹の中の大いなる魂も
人の欲望の犠牲になってしまうのかい
崩れ始めた律動と奪われてゆく均衡の中で
いつまでも子供を産めると思っているのかい
君に会いたい
いつか憎しみも溶けて 悪も風に変わり
消えてしまう時が来るのかい
いつか穏やかなやさしさに包まれて
安らかに眠れる時が来るのかい
いつか世の偽りも狂気もすべて
夢に吸い込まれる時が来るのかい
いつか愛が人を放さずに
人が愛を放さないときが来るのかい
君に会いたい
君に会いたい･･････
