変態



世の中は絶えず回っていて

いっときもそこに留まりはしない

驚くべきはやさで

まわるまわる


それはまるで

止まったら倒れてしまう独楽のよう

姿勢を保つため

まわるまわる


時代はつねに動いていて

いっときもそこに留まりはしない

真実を見抜こうと思っても

回転がはやくて見落としてしまう


それはまるで

止まったらバレてしまう独楽のよう

正体をさらすことを恐れて

まわるまわる


単純明快な幾何学模様も

回っていれば放射状の

美しき芸術の饗宴

美しき芸術の饗宴も

止まってしまえばただの

単純明快な幾何学模様

だから


生きとし生けるものも

変わりつづけることをやめない

ふと目を反らした拍子に

さなぎは羽を広げている


止まってしまうとほんとうのことを

目の当たりにしてしまうから

ぼくらは必死に回りつづける

ぼくらは必死に変わりつづける


昨日と同じ自分でいたくない

明日はもっと変わっていたい

そんな美談でぼくら

変態をこころみるけれど


心のどこかでほんとうは

変わらないものを求めている

たとえば不朽の真実のような

たとえば永遠の愛のような


変わりつづけることと

変わらないこと

どちらが尊いことだろう

どちらが美しいことだろう


ゆく河流れは絶えずして

しかももとの水にあらずと

昔の人は言った

すべてのものは移ろいゆき

留まるものなどないと


それが真理だとするならば

なぜにその真理は移ろわない


ぼくは変わり続けることを欲しながら

変わらないものを求めている

今朝買った新聞を片手に

博物館を訪ねるみたいに