なんだか無性に淋しくなってゆくよ
プリントだらけの鞄の中はインクの匂いが染みている
姿勢を正して聞くほどためになる話もないだろ
途方に暮れて感傷に浸っても干渉が入るだけ
チョークの粉が目に染みる チャイムの音が耳にさわる
唯一残された口まで塞がれちゃ教科書が汚れるわけさ
なあ 俺が黒板を写してるとでも思っているのかい
あんたの悪口を書き並べてるだけさ
折り目のついた答案に赤く示された数字は
俺の人間としての点数なのか
大切な友達さえこの空間の口車に乗るから
ノートを貸し合っても 耳を貸し合わない
廊下の隅で彼女と語り合う夢も
噂好きな女どもの冷やかしに引き裂かれて
隣の席の奴と打ち明けあう悩みも
理由を省略した命令にかき消されて
ひねくれる以外に術を知らず 窓の外に目をやると
工場で働く人達の汗の重さに打ちのめされる
覚えたいものは
偉人の功績よりも 社会に負けない意志
学びたいものは
文法の仕組みよりも 壁を乗り越える力
知りたいものは
アルキメデスよりも 彼女の哀しみのわけ
この暮らしが正しい大人になるための下積みならば
何処までゆけば俺は幸せになれるのか･･････
教壇に立つ支配者が入れ替わる隙に
鉄の扉の向こうの非常階段に座り込んだ
少しだけ汚れちまった空を見上げていた
何のための１８歳なのかを考えていた
誰を責められるほど世の中を知っちゃいないけど
少なくともあの鳥達のほうが幸せそうだよ
ああ 壊したい 何もかも
感じたいんだ この体で
感じなくなったら死んだも同じだ
感じたい そして
せっかく出会えた仲間達とも
競い合うより 愛し合いたい
友達の愛ってやつを感じたいんだ
ああ もう 何もかも
壊したい･･････
ほら 予想通り お迎えが来たぜ
耳を澄ますと 足音が近づいてくる
近づいてくる 近づいてくる
１０秒後に 俺は怒鳴り声と共に
教室というブタ箱に連れ戻されるんだ
言わなくても分かってる
時の戒律を破る俺の罪は重いんだろ
分かってるさ
この場所が普段立ち入り禁止だってことも
けれどあなたに分かるだろうか
こうして非常階段にいる意味が
別に間違った使い方をしてるわけじゃないんだよ
今 俺の心は非常事態なのだから
