ひかりごけ



太鼓の振動が水面をゆらし

驚いた蛍が草の影からおどり出る

ああ　ほたるよ　光を伴うそなたの存在は

あるいは意図的ではないのだろうけれど

ただ空中を舞うそれだけで

祭りに集う人々の心をなんて安らげるのだろう


それを遠くで見つめるだけのぼくはひかりごけ

洞窟の奥の奥ただ岩にしがみつく

朝の来ないこの暗闇にはひとっこひとりいない

もしぼくに羽があれば　ほたる　あなたを追いかけて

ふたつの光を重ねられるのに


じめ　じめ　じめ　じめ

湿った世界にはもううんざりだよ

澄んだ水辺で踊るあなたに会いたい

ぼくはほたるに恋するひかりごけ

ああ　コケに勝ち目はないと言われても

いじ　いじ　いじ　いじ

いじけてるわけにはゆかないよ


ほら　今宵はお祭りさ

豆腐屋が神輿をかつげば不良もたむろする

人々が集うこの場所であなたが欲しいと叫びたいな

今夜ぼくにだって羽が生えないとは限らない

運命づけられたものなどかなぐり捨てろ

ゆかた姿の少女達が滑稽なぼくを笑っても

ぼくはひかりごけの名にかけて　ほたる　あなたをつかまえる

いつまでたってもよわむしじゃない