ほこり



誇りという袈裟を羽織って

頑なに守っているものはなんだろう

かわいい自分

やわらかさのない頭

それとも覗いたら暴かれてしまいそうな

はりぼての内側


プライドというドレスを纏って

必死に庇っているものはなんだろう

かよわい自分

ここちよい優越感

あるいはつついたら破けてしまいそうな

紙風船の自信


誇り高く 気高く 孤高に生きよと

美談を語る者たちにかぎって

五合目までは車でのぼり

八合目あたりで息抜きしながら

眼下の風景を見下ろしている


麓から歩いている者たちが

車から投げ捨てられた空き缶を

拾い集めている間も

登り方が分からず悩める者たちが

樹海をさまよっている間も


自尊心という防弾服を着て

戦っている相手はだれだろう

頂に立つ人々

傷つける人々

それとも触れたら壊れてしまいそうな

傷つきやすい己


湖のほとりで ぼくは

悠然とそそり立つ富士を見上げたい

それは山頂からは決して

見ることのできぬ景色

この国のいちばんうつくしい景色


できることなら あなたとふたり

夕日に染まる富士を見ていたい

手をつないで ただすなおに

おおきいねえ きれいだねえと

胸のほこりを払いさって