ホーム



２番線のホームで

上りの急行に乗るきみを見送ったあと

８番線のホームから

下りの最終に乗りこみます


笑いっぱなしだったからこそ

ひとりの帰りはよけいさみしく

イヤホンを耳に突っ込んで

音楽と電車に揺られるのです


先に自宅に着いたきみから

「ただいま」というメールが届き

なんだか変な感じだけれど

ぼくは「おかえり」と返信します


ひとり暮らしの部屋に着くと

今度はぼくが「ただいま」と送り

やはり可笑しな感じだけれど

きみから「おかえり」と返ってきます


そんな風にぼくらは

過ごしやすくも　物足りなくもある

春のような　秋のような

日々を繰り返しているけれど


いつかぼくらが　もっと強く

もっとやさしくなれたなら

灼熱の夏も　凍てつく冬も

痛みも悲しみも分かち合い


iPodとケイタイを捨てる代わり

家にステレオと電話機を据え

「ただいま」の呼びかけには

「おかえり」がこだまして


そんな風に暮らしを

束ねてゆけたらと願うのです

ともに同じホームから

未来行きの鈍行に乗って