滅びゆく叙情 ひたむきな熱情を うっとうしく思う者が増え むきだしの熱意を 冷笑する者が増え ひとのこころは史上初めて 氷河期へと向かっている キドアイラクは 感情論と片づけられ とり乱す思いは 恥ずかしいと見下され 渇いてゆく愛 滅びゆく叙情 脳ばかりが肥大して 正義や正論や正確さが 幅を利かせる時代になれば 世界は窮屈になるだろう こころの縮みや膨らみは たとえ不確かであろうとも 揺れ幅を持つものとして 季節に風を送るだろう こころ乱されることのなにが 人間としておかしいだろうか 深夜勢いにまかせて書いた恋文の どこに恥ずかしさなどあろう 翌朝　頭で読み返したら 破り捨てたくなるような はみ出す思いこそが尊い ひとのこころに沸き上がるおもいを 軽んじる者はみな敵だ 論理や効率や損得で 塗り固められてゆく日々に 抗いうるものがあるとすれば それはひたすらにだれかを愛して ふとこぼれおちる涙しかない