ふるさと わたしにはふるさとがない わたしはかぐらざかのふもとでうぶごえをあげ それからさんねんいけぶくろでくらしたけれど そのころのきおくはほとんどなく ましてとうきょうなので どちらもふるさととよぶきがしない さんさいとななかげつでさいたまの いわゆるべっどたうんにひっこした おもにわたしのきおくはこのあたりからはじまり こうこうさんねんまでくらしたけれど そういうまちをふるさととよぶべきか なんだかどうもしっくりこない じゅうくでいえをとびだして えのしまとべいぐんきちにほどちかい　 ちいさなまちでよねんくらした いろいろなひととであいわかれたけれど すべてはとおりすぎていっただけで かえりたいばしょかといえばそうでなく わたしにはふるさとがない そのせいか　のすたるじあのうたをきくと なんだかすこしうらやましくなる とかいをてんてんとしてきたものには しぬまでてにいれることのできぬ いなか　というもの つかれようが　くじけようが　まけようが ないてにげこむばしょがわたしにはない もりとか　でんえんとか　だんだんばたけとか なつかしむけしきがわたしにはない ただいまといえるうみがない おかえりといってくれるやまもない わたしのいなかは ははおやのおなかだけ それだけがわたしのほんとうのふるさと どうあがいてもかえれはしない でもね　かあさん　なぜだろうひとは ときどきふるさとがこいしくなるね