教室の窓から見える景色はいつも変わらない
同じ席から同じ角度で眺めているから当たり前さ
シャープペンの先で机にSYSTEMと彫った
前で英語の教師がわめいているから
目が覚めちまったんだ
ノートなんて机に出してあるだけで１ページ目から白紙
何もかも信じられない こんな俺に誰がした
黒板をこするチョークの音 教室を漂う大気の色
嫌いなわけでも淋しいわけでもないけれど
もう息苦しくて仕方がないんだ
休み時間のチャイムと同時に立ち上がって
ジュースを買いに門を抜けた
何だか職員室の窓に見張られてるようで
脱獄囚みたいな気になった
やけに陽射しが優しく俺を包むから
少しだけ笑っちまって
３時間目の教師の顔を思い浮かべると
そのまま公園に向かった
平日のこんな時間 どうりで人通りが少ないわけだ
けれどいつもの席からじゃ見えない景色ばかりで
得した気分になった
公園には犬の散歩に来ているおじいさんがいて
俺はベンチに腰掛けると煙草に火をつけた
ああ ここはなんてゆったりとしていて暖かいのだろう
生物学の授業を受けているみんなにも教えてあげたいな
ふと頭を後ろに投げ出すと警官が二人通りかかった
やばい この格好はどうも目立ちすぎちまう
俺は学ランを茂みに隠して身をかがめた
おかしな話さ 逃亡者のように脅えちまっている
別に降伏しているわけでも間違いを認めているわけでもない
ただ 訳を話したところで大人達は理解してくれないってことさ
ああ せっかくの気分が台無しだ
そういや バイトの作業服が入ったカバンを教室に置いてきたから
このまま家に帰れやしない また戻るしかない
休み時間を見はからって教室に戻ると
彼女だけが駆け寄ってきて心配そうに俺を見つめたけれど
話によると俺が消えていたことに
先生は気付いてなかったらしい
なあ 俺はちょっと自由の空気に誘われただけなんだ
俺を敗北者と呼ぶかい
俺はちょっと違った景色に触れたかっただけなんだ
俺を間違いと決めつけるかい
俺はそれなら何処にいればいいんだい
俺は何を見つめてればいいんだい
俺は捨てつづけなければいけないのかい
俺は言われたとおりにしていればいいのかい
俺は黙ってればよかったのかい
俺は気付かなければよかったのかい
なあ 教えておくれよ
ここにいて街に勝てるのかい
