終電は時間どおりに発車したらしい
コンコースにしゃがみ２箱目の煙草に火をつける
独り外で酒なんて飲むもんじゃねえな･･････
タクシー乗場の行列を見てたら吐き気がしてきた
生命保険の看板の前ではしゃぐ集団の中
饒舌な中年に肩を抱かれているのは部下の女の子かな
かわいそうに･･････
柱のこっち側で固まり笑っているのは
さしずめどっかの大学の合コンの帰りだろう
女の子達が時刻表を見て愚痴る口元は少し緩んで
柱の影 男の子達がジャンケンで何かを決めている
俺は何だか酔いがまわってきたみたいで
腹なんか少しもへってないのに
ポケットにあったチョコレートをかじった
いっそこのまま犬みたいに眠ってしまいたかったけれど
補導でもされたら１７ってことがばれちまう
仕事を終えた駅員達は終電が行っちまったのに
これからどうやって家まで帰るのだろう
毎日車通勤なら酒なんて飲まないのだろうか
タクシーならいつもあんな行列に並ぶのだろうか
駅員室に泊まるのかな 子供の寝顔も見られずに･･････
ふと気づくとさっきの合コン御一行様は
いつの間にか男女ペアになってまた夜の街へ消えてゆく
しだいに人がまばらになり 俺は石みたいに硬くなった
アルコールと化粧品が混じったような匂いの女が一人
何か値段みたいなことを耳元でささやいたけれど
眠った振りをすると ハイヒールの音だけ残して消えた
とうとう誰もいなくなった
むしょうに誰かと話したくなって手帳を開く
でも本当に話したいと思う奴はほんの一握りだ
そして一握りの親友を夜中の電話で起こしたくない
あいつらにまで見捨てられたら それこそ終わりだ
分かり合いたいなんて気持ち捨てたほうがいいのか･･････
このまま独り 始発が来るのを待とう
長い夜を 欠けた月が沈んで見えなくなるまで
ネオンの消えてゆく街をにらみながら･･････
本当に始発なんて来るのだろうか･･････
俺は煙草を２本同時にくわえて火をつけ
チョコレートの銀紙を丸めて 握りつぶした
