感情のうた



駐車場から見上げた星座たちの名前を知らない

どれがシリウスだか北極星だか

ぼくはただ放心し

ほのあたたかい恍惚を得る

ふるえつづけている心のほかに何を望もう

それだけあればいいそれだけあれば


物心ついたときから神はいなかった

雲の上にも胸の内にも奇跡の中にも

ぼくはただ祈った

漠然とした夜空に手を合わせた

祈ることのほかに何ができただろう

神を知っていたらぼくは救われていたか


草むらで鳴いている虫達の名前を知らない

どれがマツムシだかウマオイだか

ぼくはただたたずみ

口をあけた聴衆となる

わずらわしい知の影で消えゆきそうな情よ

どうかぼくを揺さぶりつづけてくれ


あなたを形容する言葉が見つからない

美しいだなんて愛しいだなんて

ぼくはただ見とれ

この花が幸せであることを願う

感じることのほかに何があろう

あなたが生きていればただそこにいれば