完全犯罪　無罪判決



久しぶりに君にもらったカセットを聴いた

ノイズだらけで尻切れとんぼのカセットだけど

柄にもなく明かりを消したい気分になって

その４６分間　俺は想い出に包まれた


この歌を歌ってる奴も　今はもう落ち目で

変なところで時の流れを感じた

窓から見える夜空は星ひとつない

君といた頃はまだ少し星が見えたような気がする


俺が犯した　完全犯罪

君が下した　無罪判決


Ａ面が終わったところで静寂が怖くなった

すぐにカセットを裏返してまた遠い日を想う


喧嘩に明け暮れていた俺に

いらいらした顔で文句を言っていた君

１５で初めて君と夜を交わしたけれど

それからは一週間も口をきけなかった


若すぎたふたりの恋は　痛みを乗り越える術も知らず

俺は君が背負った傷すら

癒してやることもできなかった


俺が犯した完全犯罪

君が犯した無罪判決


俺を許そうというのか

どうして責めてはくれぬのだ

唯一の目撃者である君は

俺を訴えようともしない

君と離れてからもこんなに苦しんでいる

いっそ死刑にしてくれたほうが楽なのに


俺が犯した完全犯罪

君が下した無罪判決


そして君が下した無罪判決こそが

俺にとっての終身刑なのだ･･････


カセットが止まった

長いレコードを短いカセットに無理矢理押し込めるから

曲の最後が途切れている

まるでふたりの恋みたいに