かさぶた



長い冬を終わらせて

月明かりの下で結ばれよう

まだら模様の昨日

網目状の明日

今はいい

今はいいよ


熱病におかされた犬ならば

せめておまえを温めよう

やがて氷河期は溶け

未来へと流れ出すから

さあ　カヌーへ

狭いけれど頑強な

このカヌーへおいで


重いかばんは森に預けて

よもすがら　たがいの名を呼ぼう

恋とか

恋じゃないとかは

理論派の鸚鵡たちが

あとで勝手に決めてくれるさ


思い出したくはないことを

思い出させてやる

おまえはずっと独りだった

傷の名残をかさぶたにして

忘れたいくせに貼りつけて

でもいい

もういいよ

氷の季節を重ねるうち

傷口もふさがれたはずさ

それを一緒に

たしかめよう


上にして横にして下にして

ゆっくりとおまえに熱をうつせば

やがて血の塊は溶け

未来へと流れ出すから

さあ　カヌーを

きしむけれど沈まない

このカヌーを漕ごう


その裸をどうぞください

かさぶたの下に新しく生まれた

おまえと初恋がしたいんだ