かささぎさん



日曜の朝のことでございます

ファンデーションがなくなりかけていましたので

(ちなみにわたくしマキアレイベルの

クリアエステヴェールを愛用しているのですが)

近所のスギ薬局へ向かっております途中

頭上に気配を感じたもので見上げますと

電柱上の ええと あれは変圧器というんですか

のところでかささぎさんが巣を作ってらっしゃいました


あら こんな街にもかささぎさんが とゆうより

巣作りの手際良さの方に見惚れまして思わず

かささぎさん かささぎさん ごケッコンでも? 

などとお声をお掛けしたところ かささぎさん

少々お照れになって まあね とりあえず住むとこ

こしらえないとさ 前んとこ狭すぎだし ひょっこり雛

授かるかもだしわりとここ実家近いし そんで

女だてらに日曜大工つうわけ


それはそれはおめでとうございます

さてはて旦那様は とお尋ねしたところ

今ごろ虫取ってるとこさ と かささぎさん

それはなにより わたくしなんぞめっきりで最近じゃ

人間の殿方も草食流行りでございまして 殿方

狩りどころか虫一匹にもおののく次第で 巣作りに

雛育てにとそんな日々 わたくしには

はるか夢のようでございます


いやはや わたくしの話はともかく 日曜にも

虫取りに精とは幸せにしてくれそうな旦那様で

と申しますと つうか あたしさぁ あいつ

幸せになりたくて選んだわけじゃないのよね と

喉の奥をふるわせて仰いました

ではどうして? かささぎさん曰く なんつうの

むしろ逆ってゆうか あいつとだったら 

不幸になってもいいかなって


するとかささぎさん やべ枝足りないわと

五月晴れの空へと飛び立ってゆかれました

ふと横見るといつのまに市の職員 にがり顔で

ここんとこ鳥のやつらが巣 つくりやがるもんでさ

風車でも取り付けて追っ払ちまわなきゃなあ

と 電柱を見上げながら呟かれました

苦情の電話が鳴りっぱなしでよお

停電にでもなったら あんたも困るだろ?


それでわたくし スカートの裾を押さえつつ

そいつのケツを蹴飛ばしてやりましたの あら

ケツだなんてはしたない 失礼をば

お尻に足をぶっつけて差し上げたのでございます

おにがりさん 目を丸くして退散してゆかれましたわ

お恥ずかしいやら清々しいやら はてもしや もしやら

わたくしの中にも かささぎさんのお雛が

ひっそり宿っているのやも