恋達



ウララに期待という感情はない

歳月を重ねても後ろめたさは消せない

けれどユメヒコに妻がいるという事実さえ

この火を消すほどは力をもたない

ずるさの泥にまみれているなら

離れることも難しくはないのに

抱き合うことはおろか手も握らず

三年が過ぎようとしている

感情は麻痺してすべてがぼやけている

はっきりしているのは

出会いが遅すぎたということだけ


タケルは心を閉ざしてしまう

自分しか味方がいないことをかみしめる

ミミの笑顔が可愛くてしかたがないから

胸引き裂かれそうになっている

自分だけ見つめていてほしくなるたび

限界というものに何度も踏みにじられる

この場合　生涯失わないということが

つまりは失うしかないということじゃないか

秋の宵　タケルは激しく血を憎む

ミミが妹だということを


ハヤテは悩みのふちに生きている

二十歳を過ぎても悩みというのはつきまとうのだな

まともな仕事にもありついて

恋人のユマとは結婚も約束しているのに

恐るべき不安というものがハヤテにのしかかる

地獄の日々と呼ぶべき苦悩の日々

十三歳のユマを胸に想うことだけが

今の自分を支えているのにちがいないのだ

いやらしい目で見るあいつらには分かろうはずもない

ふたりが潔白なことは空にも誓えるのに


マフユは命からがら世から逃げる

走るたび豊満な胸が上下に揺れる

打ち明けることもできず手を触れることもできず

この片想いをいっそ川に流したくなる

女子高の同級生だったアヤノを

マフユは決してあきらめることができない

のどもとに突き上げてくる想いを分かってください

どうかどうか男のもとにはゆかないでください

ああ　この想いが間違っているだなんて

いったい誰が決めたことなの･･････


どこかに意地悪な神様がいて

アダムとイヴが寝ている間に

檸檬をかじらせたのかもしれない


想いは千里をかけ

遠い光にたどりつくべく

今宵も闇をさまよっている

祝福のない宇宙の片隅で涙をこらえながら

それでも誰かに認めてほしいと

もうひとつの世界を捜している

なんて悲しい恋達よ

なんて清らかな絶望よ