こんな馬鹿げた嘆きにも



壁づたいで幻覚に陶酔する幸福へ歩きつづける人波は

まるで死刑を宣告された囚人のように

逃れることもできない

街に流れるラブソングに耳を傾ける余裕もなく

忙しさを言い訳に足取りを速める排他的な労働過多

己を取り戻すために費やす時間は浪費だと信じ込んで

金で買える安らぎを心の回復に利用しようとしている

こうして通勤ラッシュの電車の中で

漫画を読む大人達が作り上げた社会を

徹夜のコンピューターゲームで

瞼をはらした子供達が引き継いでゆく


もう誰にでも理解できるような

簡単なことばかり叫んでいても意味がないんだ

誰もが自分の生まれた意味を知る他に

この時代を救う術はない


だからといって俺は今日も

ほんの些細な矛盾をどうすることもできないでいる

求めているものと　こぼれてゆくものが

交互に頭を駆け巡り狂い出しそうだ

世間に通用する倫理がいつも正しいとは限らないけれど

この重たくのしかかる不条理に堪える術を

何処に見つけ出せというのか


ああ　信じられるものすら一つ一つ形を変えてゆくよ

頑なに守り続けたものさえも

どんなにあがこうがこの手を離れてゆく


絶望の訪れに

自分の脆弱さを見せつけられてばかりいるけれど

俺は唯一これだけは忘れはしない

俺にはまだ愛を注ぎ込んでくれる友がいるということを

だから俺は生きる意味を見失った時にも

この愛すべき友たちのために生きよう


たとえ積み重なる悲しみにひどく心が痛む時でも

ひたすらに強く生きてゆかなければ


そしてこんな馬鹿げた嘆きにも

優しい目で答えてくれて

ただただ俺を信じていると言ってくれるお前のためにも

まだ負けるわけにはいかないから