花車



乳房の香りで目が覚める

寝息がつむじにかかる

まだ暗い

夢か

いや うつつだ

さっきまで動物だったおまえに

引っかかれた背中がまだ熱をもっている


どんな夢を見ているやら

おまえは眠りの中にいて

春の海のように静かに波打っている

起こさないようにそっと

背中に腕をまわす

いくら抱きしめても

抱きしめ足りない体よ


眠っているうちに愛を言おう

胸の内そのまま写しとるように

ぎこちなくて たどたどしくて なさけない愛を

夜が明けるまでなんどでも

つつみかくさずむき出しに

そのきゃしゃな肩ごしに


そしておまえが目覚めたら

あたかも今起きたかのようなふりをして

まだ眠いやとか 花に水をやらなけりゃとか

今日は廃品回収の日だなとか告げて

同じ一日を始めるんだ

およそ浪漫とはほど遠いけれど

たとえばそんな風に

おれはおまえの朝になれたら