水割り 氷をグラスに入れ ウィスキーをツーフィンガーそそぎ マドラーで13回転かきまぜ 水でうすめるのが おいしい水割りの作り方 らしいのだが ひとりその作業をするたびに ぼくはくるしくなる あなたがおなじことを だれかのために 夜ごとしていたのだと 突きつけられるから 底にたまる ツーフィンガーは いつか約束を交わした ふたつの小指のようで 氷をかきまわす 13回転は 死刑台にあがる 13階段のようで 自分のためにこしらえた 液体など おいしくはないけれど ぼくはそれを飲み干して しずかに酔いを待つ あなたのほかに酔えるものなど このせかいにはないのに いくら水をそそいでも 思いはうすまらないのに