もうひとつの銀河 7階の角部屋 あなたはルームライトを消し ぼくは有線を消し たがいに鞄へ手を入れて スマートフォンの電源を 長押しする ベッドの調光を あなたは左に回し ぼくは右に戻し 妥協点を見つけたところで ぼくらはダイヤルから ゆっくり手をはなす シーツの上 壁の方を向いて座る背中に 点々と灯るほくろを 舌でつなぐ ぼくがはじめて 見つけた星座 やわらかな闇にたおれこみ あなたの星雲に口づけると 赤く尖った爪が ぼくの鎖骨にくいこみ 唇からはほのかな 月のかおり 横たわるあなたは はてしない銀河だ とうていひと夜で 抱きつくすことなどできない 無限に広がりゆく もうひとつの銀河だ それでもぼくは 知りつくしたい たとえ千夜の契りが むなしく屑と果てようとも その内に燃ゆるすべての星を ぼくは見つけたい