無色の愛



ぼくらは無色の精神世界で愛し合った

それはぼくらにとって不自然なことではなかった

恥じらいがちにぬくもりを欲しがる夜

ぼくはきみに会いたくて何度も駆け出した

もろい意識のつながりがほどけてしまうのが怖かった

だから幾千もの夜の中ぼくは君の処女を守った

言葉も肌も邪魔くさくて手も触れずに見つめた

じっと　手も触れずに　じっと　じっと　見つめて

それに飽きると手も触れずにじっと見つめた


ぼくらは決して愛を勘違いしなかった

誰が笑ってもぼくらは間違えていないことを知っていた

ボタンやベルトをはずすことは大いなる悪だった

そして衣に包まれた皮膚に永遠の未知を約束した

ただあの日　きみの右頬を指先でつついたこと

それがぼくの恍惚で罪で官能だった

肉体が邪魔くさくてただじっと見つめた

じっと　角度も変えずに　じっと　じっと　見つめて

それに飽きると角度も変えずにじっと見つめた


他に欲しいものは何もなかった

ぼくらは満たされて昇りつめて果てていた

それは至上の快楽だった　堂々たる精神世界だった

紛れもなく

無色の愛だった