往復



貴女の新雪のやうな肌や

しなやかな四肢を見つめてゐると

悪魔が来たりて吾に乗り移るのです


なにゆえ天使でいられぬのかと

貴女は問はれませうが　其のとき既に

応ふる吾は　あくまで悪魔で


オマへガ　欲シイノダ

オ人ヨシデイタラ　指ヲクワヘテヰルウチニ

ダレカニ奪ハレテシマウデハナイカ

イトシキ者ヲ　吾ガモノニセンガタメ

男ハ　悪魔ニナルホカナイノダ


嗚呼　雪山に咲く小さき蕾

なにものにも触れさせたくない！

雄々　森の中に潜む鍾乳洞

なにものにも汚されたくない！


内なる天使がさふ叫ぶとき

再び悪魔が来たりて　吾を支配するのです


オマヘヲ　食ベタイノダ

良心ナゾニ頼ッテイタラ　見トレテヰルウチニ

何処カニ去ッテシマフデハナイカ

此レト決メタ者ヲ　呑ミ込マンガタメ

男ハ　魂ヲ売ルホカナイノダ


悪魔祓いをさせてください

取り憑かれた吾を　貴女の水際で

どうぞ往復させてください

済めば　借りてきた天使のやうに

やさしく髪も撫でられようものを


阿呆な生き物と思ふでせうけれど

千年語っても解っては貰えませぬでせうけれど

いくさを起こせるほど悪に傾きやすいのは

生来さういふやうにできてゐるものの罪であり


醜いけだものと思ふでせうけれど

そもそも唯ひとつの卵にたどりつかんが為

悪かろうがずるかろうが勝ちぬかねばならなかった

精の生き残りがはらんでゐる宿命であり


悲しいかな　故に男は

其の罪を認め　許してくれる女を求め彷徨ふ


悪魔と天使を行き来する吾を

さぞかし滑稽だと感ぜられるでせうね

日がないちにち

人間と天使を行き来する貴女には