終わりなき恋文



たとえば偶然

雨上がりの空に虹を見つけたら

街中の人を呼びとめて

ほら　空をごらんよ

ねえ　いますぐに

と話しかけたくなる

でもそれじゃ怪しまれるから

わたしは詩を書くのです

だれかと虹を分かち合いたくて


たとえばそんなとき

胸には虹色の感情が

じわりとにじみ出してきて

でもそれはあやふやで

「七色」というのも正確でなく

まして数値や

記号にも置き換えられないので

わたしは詩を書くのです

あいまいさを丸ごと汲み取りたくて


たとえばわたしが

すぐれた画家であったなら

きれいな絵に描いてみせるでしょう

巧みな写真家だったなら

見事な構図で切り抜いてみせるでしょう

けれどそんな才能も技もないので

せめて詩を書くのです

だれに届くもさだかでない

宛先のない手紙を綴るように


嗚呼　そんな風にうそぶくのが

詩など書く奴のいけすかない癖でして

胸をえぐって本音を言えば

あなたに分かってほしいのです

薬にも毒にも飯の足しにもならない

この下手くそな想いを

せかいでひとり　あなただけに

知ってもらえたらそれでいい

触れてもらえるならそれでいい


百万　紡ぐことになろうとも

永年　日の目を見なくとも

そんな終わりなき恋文を

わたしは書きつづけるでしょう

たとえ雲が陽差しをさえぎっても

たとえ闇が光を呑み込んでも

わたしは書く

この名づけようのない虹を

あなたと分かち合いたくて