当たり前の言葉さえ嘘になる暮らしに日は沈む
夢の中 降伏と占領が渦巻いて
夢の中 幸福も洗礼も消されてゆく
もう夢とも現実とも戦いたくない
それでも行かねばならぬというのなら
何を拒みつづけ 何を受け止めよう
人の心に宿る哀しみの源を抱きしめるように
生きるための力は休みなく安らぎを求めてゆくだろう
痛みに変わることが運命なら 愛よ
苦しみを背負い ここから何処へ向かってゆくのか
睡眠という最終兵器すら矛盾を鎮められない日には
眠りは疲れを癒せず 目覚めは痛みになだれ込む
一度だけでもいいから心からおやすみと言いたくて
たどりつける場所を探しても 真心は枯れ果てて
たった一人でも誰かを愛せるならば人は
約束された生活が手に入ると信じて今日を生きてゆく
愛がすべてを救う もどかしさに耐えかねていても
愛が互いを通わせる時 それが心になるから
日常に疲れた君の両足はこわばって
落とし損ねた爪先のマニキュアは痛みの旋律を奏でる
それでも嘆くことを許さない唇からは笑みがこぼれ
白い胸は雲のように清らかでやわらかい
ああ 力んだ肩から流れる淋しげな不安よ
ふたり寄り添うだけじゃ確かめられないのか
思いやりを取り戻すように息を吸い込んでみても
語りかける言葉ひとつも溜め息に変わるなんて
ねえ ほんの少しの間 待っていておくれ
今 ストーブをたいて部屋を暖めるから
互い探しつづけても未だ解けぬ愛の意味が
今は未熟なふたりをぬくもりに溺れさせてはくれないよ
せめて 寝顔を暖めてあげることができるだろうか
眠れないんだ だからずっと手を握っているよ
ほんのひとときでも君が素敵な夢を見ていられるように
疲れているんだね そっと目を閉じておくれ
これからふたりで乗り越えなきゃならないことが
たくさんたくさんあるのだから･･････
君が眠りに落ちる時 最後に見る男は
君が目覚める時 最初にその目に映りたいだけ
そして朝が来たら 誰もが思い描いているような
遠い真実の光をまた一から探し始めよう
これが当たり前の言葉さえ嘘になる暮らしだとしても
今夜だけは ひとつ残らず嘘にさせたくはない
信じておくれ どうか清らかな優しさに包まれて
愛する君よ おやすみ
