パート２



雄弁な雑居ビルたちの隙間を歩いた

「ぴあ」の懸賞で当てた腕時計は

これ見よがしな時計台より２分遅れている

メイルを打ちながら歩く女がぶつかってきて

ハマチみたいな眼で睨む

迷うために作られたような路地と路地と路地を

寡黙な驢馬となりぼくは歩いた


南北線の二重扉に不健全を言い当てられて

吊革につかまればそこは弱冷房の荷馬車

不覚をカラメル漬けにして立ったまま鼾をかく利点は

疲れをストレスと呼べば他人のせいにできること

ドナ　ドナ　ドナと地下鉄に揺れて今日の残像を

限界まで濾過して己と向き合おうとも

どこまでが自分か分かりはしない灰色のアンチテーゼ


物だらけで空っぽな部屋にたどり着き

シュールレアリスティックなソファーに倒れこんだ

吸殻が山積している灰皿ごしに見るテレビは

どこをザッピングしても変人しか映っていないから

チャンネル２の砂嵐を見ながら笑った

また繰り返すのか　同じ朝凪と夕凪を

日々を捧ぐ対象もないのに　何のために


明日を今日のパート２にしたくない

見違えるような楽園があるわけじゃないにせよ

デキレースの波に身をゆだねて

誰かのパート２を生きたくはない

欲しいのはいわば　アコースティックな夕べ

仕事で良心を汚すなんて　そんな馬鹿げた生き方

そして冷房の温度を５度下げ

１７度の風とマクワウリをかじった