ラピス・ラズリ



夜空のかけらをやる

屋根の上から手を伸ばして

さっきつかまえたばかりだから

まだあったかいだろ

逃げないように握っていたら

こんなに丸まっちまったけど


そう言って少年は

かじかんだ少女の手をとって

ひとつぶの石をのせた

それはもつれ雲と

冬の星々を封じ込めたまま

少女のてのひらで瑠璃色に光った


少女はその石の名を

ほんとうは知っていたけれど

少年の嘘が気に入ったので

身をゆだねることにした

ただそれが少女の

誕生石であることは知らない


月明かりの下

凍えた風が吹き寄せたので

少女は両手で夜空を包み

その両手を少年が包んだ

ふたり　手の中のぬくもりが

宇宙へ帰ってしまわぬようにと