檸檬



檸檬を分け合ってかじった日

火花が散ってそれは始まった

正しい人々がいやらしい目でぼくらを見る

正しい人々がいやらしい目でぼくらを見る

運命を憎んで生きてきたぼくは

運命の人の膝元に落ちた

正しい神々が罠にかかったぼくらを憐れむ

正しい神々が罠にかかったぼくらを笑う

巡り会ったことの有罪が胸をひきちぎるのに

何故にあなたはこんなにも近い


ああ　裁きにおびえる夜が過ぎれば

やがて影で生きる朝が訪れる

どうかぼくらが死に道を見いだす前に

視線よ　　偏見よ　　この世の縁から地獄へ落ちろ

噂好きな生き物達への憎しみは燃え

その熱は恋を助長して止まぬ

この街の歪みとぼくらの歪みとが

うまく噛み合わなかっただけのことだ

やましいことなど何ひとつない

生まれて出会って愛しただけだ！


笑えぬ恋人よ

もう罪さえ受け入れる覚悟ならば

ここから旅立つほかはない

急流の川に舟を漕ぎ出し

モラリストの住まぬ草原にたどりつくなり

頭上にひろがる無人の空間を見上げ

ふたり宇宙に浮かぶ粒子となろう

くだらない常識で動くこの星にいたら

いつまでたっても一緒になれやしない


檸檬を分け合ってかじった日

戻れぬことはもう知っていた