理由なき犯行 なぜ　殺したのか そう問われて少年は いや　別に と答える 大人たちは 理由を追わずにはいられない あんなことをしたからには それなりの理由があるはずだと 突き止めないと納得がゆかないから 解らないと不安で仕方がないから やっきになって理由を探す 見つからないとこじつける 理由がないなんてことはありえない そんなことあってはならないと 頭でっかちが言う インテリゲンチャどもは 自分の頭で理解できないことが 怖くてしかたないんだ なぜ　詩を書く そう問われても　ぼくは いや　別に と答えるしかない 理由なんて知るか　表現したいだけさ というと今度は では　なぜ表現したい？　と いや　別に なぜ彼女が好きなのかと問われても いや　別に　としか言いようがない 理由があって 惚れたわけじゃない 思えば理由のないことばかり 日々ぼくらはしているはずで 理由もなくやる気が失せ 理由もわからず巨乳に目がゆき 理由なき反抗すらし たいてい理屈は後付けで ということは　ともすれば ぼくも　いつの日か突然 理由なく人を殺めるかもしれない いや　別に　とか 表現したいだけさ　とか言いながら そこに行き着くのが恐ろしいので ぼくらは理由をこじつける 家庭環境や　バーチャルゲームや マリリン・マンソンのせいにして そうやって　ほっとしたところで ふたたび平穏な日常に帰る 真相は置き去りにしたまま ただ理由もなく