路線図 上尾　 ぼくが育ったところで いまも暮らしている街 Ｙさんに初恋をした地 おそらくはここが ぼくの起点 大宮へ飛んで 高崎線から京浜東北線へ乗り換える 与野にはＣさんが住んでいた 北浦和は二十代の頃 勤めていた塾があって Ｍさんが住んでいた街 南浦和は高二の春 Ｋさんに告白してフラれたっけ 西川口の高校に通っていたころ （あれ　ＣＭＹＫって ぼくが恋した女の子たちは なんだかインクの原色みたい） 赤羽にはＭさんの職場があって 彼女はのちに田端へ越したっけ ここで京浜東北線から ぐるりとまわる山手線へ 上野は十代の頃よく アメ横でジーンズを探してた 会社を辞めてからは 御徒町の専門学校にも通った オーディオマニアだったぼくは 秋葉原の電気街にもよく行ってたな 本が好きで神田の古書街や 東京の丸善にも 渋谷の中古レコード店には 今でもよく通っていて 悲しいことがあると 代々木公園の噴水を見ている 新宿紀伊国屋は 詩歌の本が充実しているんだよね 目白はＣさんの通う女子大があった そして池袋 生まれて最初に住んだところで あなたと出会い　結ばれ 別れた地 路線図を順にたどっていたら つい思い出にひたってしまった 時系列はバラバラだけど これまでのちっぽけな人生で ぼくが通いつめた街 趣味が高じては訪れ だれかを愛しては失い めぐりめぐった土地 そこにはどんな意味があるだろう 思い出の駅たちを なぞるように繋いでみたら その軌跡が描いたのは さかさまの疑問符だった