再会



ここにこうしているということが

とてつもなく不思議に思えた

こうやって笑顔で顔を合わせられる日が来ることなんて

ふたりが一番信じられないことだった

久しぶりに会った君は髪がのびて

少し生活に疲れているようだった

それでもあの頃と変わらない声で

優しく語りかける君を見ていたら

不信にあふれた暮しを暮しをしている

自分が求めている何かが頭をかすめた

今のふたりの両極端な生活に象徴されている時の流れは

何の障害もない恋を僕が壊したことから始まった

こうして今　肩を並べて歩いているということが

罪なのか罪でないのかという判断は

僕の弱さと君の思いやりによって閉ざされたままだった

僕らにはもう他愛もない言葉を交わす程の力しか

残されておらず

それは沈黙のうちに

互いの心の中に刻み込まれていたことだった

僕は過ちを償うための言葉すら思い浮かばないまま

大人っぽくなった君の仕種のひとつひとつに

目を奪われていた

君は僕を責めるようなことは何ひとつ言わないままに

微笑みの上に幸福をのせて静かに僕を見つめていた

そんな君を見つめていたら

何とも言えない複雑な気持ちになって

心の引き金を引いたまま

撃ち放つことさえまるで無意味に思えた

僕らは別れ際に

「じゃ、またね」と言って互いに背を向けた

「さよねら」というのが妙に怖かったからかもしれない

けれどふたりの「じゃ、またね」には

何ひとつ確固たるものなどないような気がした

僕は一度も振り向かずに駅の階段を一心に駆け上がった

だから君が振り向いて僕の方を見たかどうか

僕は知らない