目を盗んで列から外れた
ガイドが説明する古い建造物など興味がなかった
教室を離れたところで退屈なのは変わりがない
陽気な連中との旅が気分を高めるかと思えば雨だ
たぶんあの偉そうな面構えの校長が雨男なのだろう
いつもと同じ制服だけに 勉強に結び付けたがる旅さ
２泊３日で１０００年もの歴史を呑み込めるはずはない
みやげ屋で万引きの数を競うのもしらけちまうし
他校の奴等とにらみ合ってみるのは別に意味などない
半日バスの中で気が滅入ってただけさ
宿につくと 男女別々の棟に振り分けられて
俺たちはやっと窮屈な制服を脱いだ
仲間の一人が 女風呂覗きに行こうぜと言ったけれど
バレて先公の警戒を強めたら今夜の計画がフイになる
裸よりももっと見たいものが 今日の俺達にはあるから
日が沈むと ひたすら消灯時間を待ち続けた
電気の消えた瞬間が 作戦決行の合図だから
俺達は危険な約束を胸に 完璧な脱走を謀った
女の子との待ち合わせ場所は仲間内でダブることはない
男同士で前もって話を合わせてあるんだ
連中たちは俺の相手が来ない方に５００円ずつ賭けていた
来るほうに賭けたのは俺一人で どう見ても不利だった
優等生で模範生徒で旅行委員の君が
ルールを破ること自体不可能と誰も疑わなかったからだ
そしてその日俺は しめて３５００円の報酬を受けた
けれど その日最大の報酬は
裏庭の薄闇で 君の微笑を手に入れたことだった
もし その時 月明かりが
もう少し はっきりその顔を照らしていたら
俺は迷わず君に結婚を申し込んでいただろう
次の朝 女の子達が３５分間の説教を聞いている間
俺達は計４０発のげんこつを有難く頂いた
けれど 制服で城や寺をまわることよりも
私服姿のあの子をひと目見ることのほうが
今の俺には 何千倍も大事なことなんだ
