真珠



きみは迷いの淵にいる

ひとりぼっち沈黙の部屋で

ため息を量産する

ほんとうは本音を知っているのに

それを認める勇気が足りない

たった一度の命ということさえ

ときどき忘れながら


理解者の不在に気づいた日

きみは風の中にたちつくした

その時から夕焼けは美しいものでなく

むしろ弱さを浮き彫りにするだけの

赤い赤い悲しみとなった

赤い赤い暗闇となった



夢と生活の狭間の中で

きみは貝となる

悩みの海は底が見えず

遥か岸辺も見えてはこない

ほんとうは大切なものを知っている

いつだって理念はその胸の中央に

激しくそっと咲いていた


だからきみよ

だれもがみな苦もなく

清らかに進んでいるように見えてしまう時でも

きみはきみの道を進むんだ

きみだけの海路を進むんだ

それは長く寂しい航海かもしれないけれど

白き帆を張り

偽りなき風をつかまえ

進め 本心に舵をとらせて

進め 甲板に純真を寝転がせて

傷つくことを恐れて

そのふところの真珠を捨てるな