不眠症か？　という疑問にとらわれていたが、単に考えすぎ。

何か色々な考えが頭の中を駆け巡り、俺から安らかな夜を

奪っていただけだった。くたくたになればまだ眠れる。現に

昨夜は２時間３0分しか眠れず、今日は一日歩き回っていた

が、野球場の芝生に寝っころがると、少しだけ眠れた。快適

だった。ほんとうに、試合が４回の表から７回の表まで進む間

だけだったのだが、安らかに眠れた。外で眠るのは気持ちが

いい。

空の下で眠る。

こんな快適で手に入りやすく大切なものを忘れていた。人間

とは元々自然と共存するべきだ。コンクリートの中で安らげる

動物なんていやしない。もっと自然に溶け込むことで、思考は

自由になり、行き詰まりそうな回路は正常さを取り戻す。

俺は一日のうちで、もっと疲れなくてはだめだ。疲れないという

ことは、きっとどこかで手を抜いているのだ。やりきれ！　や

りきれ！　やりきれ！　一日のうちに力を残さず使い切れ。

そうすれば、眠りがいかに美しいものであるかを知るはずだ。

本当は一日が何も戸惑うことなく、安らぎにあふれ、愛に満ち

ているなら、美しく眠れるはずだが、この日常が足りないもの

ばかりである限りは、とにかくやみくもにすべてをやってのけて

くたくたにならなければ、快い睡眠はない。なぜならベッドに入

ったとたん、色々な観念が俺を眠らせないからだ。夢が実現

すること、弟と遊ぶこと、友達のこと（愛情も裏切りも含め）

将来のこと、明日の腐りきった予定、破れた夢のこと、報われ

なかった愛・・・・・・。つまりはこれからの展望や過去の苦しみ。

でも、今夜はゆっくり眠れそうだ。それらすべてを８月１２日に

起こった流星群のように、夜空の片隅へ押しのけるように美し

く流しながら・・・・・・。