ソレイユ 出口のない祠をさまよっていた 地図は破れ　磁針は狂い　 分かれ道にさしかかるたび より闇の深い方へ迷いこんだ とうに火種は尽き わたしは触覚の折れた虫のように 両壁にぶつかりながら進んでいた やがて水も尽き もはやここまでと諦めかけたとき ふいに遠くから ひとすじの光が射した ともし火に手を伸ばしながら 祠を抜けると そこにあなたが立っていた あなたはわたしの手をとって ふたたび外の世界を案内してくれた 生まれたての赤子に教えるように あれは空　あれは雲 あれは森　あれは湖　と ひとつひとつ指さしながら せかいはまだ うつくしさで満ちていると それでは わたしは指さして尋ねる あなたはだれ？ あなたは口を閉ざしたまま ただちいさく微笑んだ だれだってかまいやしない わたしはあなたによって 命をふきかえし ふたたびせかいに連れ戻されたのだ 人々はそれを女神と呼ぶだろう でもわたしはこう呼ぶことにする 運命のソレイユと ソレイユ　手をはなさないで もうひとりにはしないで わたしにだってあなたに 教えてあげられるものはある あれは銀河　あれは星雲 あれはシリウス　あれはヴィナス そしてまっすぐ指さして告げる あなたは太陽 わたしの闇を滅ぼし わたしが幸せにする星だ