春夏秋冬 からかぜ吹きよせる冬 ピアノの稽古をさぼったきみが 先生に叱られた日も かれは舞いあがる秋 入院のベッドに横たわるきみが 不安をかかえていた日も ぼくはそこにいなかった あめ降りしきる夏 今よりも髪のみじかいきみが 恋人と別れ泣いた日も さくら散りしきる春 袴姿でキャンパスを発つきみが ご両親に祝われた日も ぼくはそこにいなかった きみの過ごしてきた日々に ぼくのいないことがくやしい いまのきみになるまでに 通過してきたすべての季節を ぼくはこの目で見たかった きみの生まれた瞬間にさえ 立ち合えていたなら きみがなつかしむときそこに ぼくのいないことがさみしい きみの抱えるアルバムに ぼくが写っていないことも できれば双子として生まれ きみが見てきた風景を いちばんそばで見たかった だなんて　まったく 馬鹿げてるだろ 笑い飛ばしてくれていいさ きみと出逢ってからのぼくは どうかしてるんだ どうあがいたところで 過去にはゆけないから せめてこれから訪れる きみの春夏秋冬は となりで見させてくれないか