手つかずの太陽



自分の中の少年に照らして

間違っていることをした

変わらぬものに焦がれながら

汚れてしまうぼくがいる


どこへ向かっているのだろう

どこへたどり着くのだろう

今日の手垢にまみれた夕陽が

ビルの間に消えてゆく


もしもぼくが鳥だったなら

わずらわしさから逃れて

空をかきいだいていたろうか

いいえ　今のぼくではせいぜい

足の生えた卵がいいところ

都会の迷路に立ちつくし

一羽ぼっち　闇に啼く


最終の電車を降りて

コンビニでふたつ肉まんを買って

そのくせたどり着いた寝息に

わけもなく胸が溶け出すんだ


きみの眠りを見るのが好きだ

その寝顔には

平和や無垢や安らぎがある

起こさぬようにそっと

隣に身を横たえ　祈る


どうか　愛しき人の明日が

あたたかな光に包まれますよう

どうか　彼女のやわらかな心が

むやみに傷ついたりしませぬよう

やがて目覚めし時　世界には

冷えた肉まんふたつと

手つかずの太陽と

きみだけがあればいい


浅い眠りのあと

ふたたびぼくは生まれ

きみがおだやかに眠れるような日を

また朝霧の中へ探しにゆく

きみがここにいてくれる限り

何度でもぼくは誕生する

きみの眠りを見るのが好きだ