東京の雪 夜の歩道橋から オフイス街に降る雪を見ている 点滅するテエルランプの列 急ぎ足で帰る人人の群れ 湿った雪たちは アスフアルトに触れた刹那 あっけなく溶けてゆく あなたは今もこの街のどこかで 働いているだろうか あなたの長い黒髪にも この雪たちはとまるだろうか シヤアベツト状のかけらは ビルヂングのすきますきまに ゆっくり舞い降りる ぼくらはあれが限界だった おなじ時代に生まれ 出会えたことすら奇跡だったのに 白く降りつもるせかいを のぞんだのは贅沢だった 銀世界を夢みたのは 身のほど知らずだった 東京の雪はたいてい 煙たがられるね 暮らしの邪魔をするばかりだし うすく積もったところで 多忙な人人の足跡で 汚されてしまう でもね　ごらんよ テエルランプやビルの明かりや ネオンや信号灯に照らされて こんなにも色とりどりで 東京の雪だって 降っているさなかは きれいだよ うつくしく積もることよりも たいせつなことはきっと やがて地に落ち溶けようとも それまでの空を どう舞い降りたか 降っているさなかを どう生きたかだ