「また、喧嘩したでしょ？」
「してねえよ」
「じゃあ、その傷はどうしたのよ？」
「転んだんだよ」
「転んだぐらいで、どうしてそんなに顔がはれるのよ？」
「うるせえな」
「もう喧嘩はしないって言ったじゃない」
「仕方ねえだろ、B組の奴らが俺達のクラスのこと馬鹿にしたんだぜ」
「そんなの我慢すればいいじゃない」
「我慢なんかできるか。だいたいB組のやつ等は体育祭で優勝した
からって調子に乗ってんだ」
「･･････もう･･････私、喧嘩する人嫌い」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
「なにかスポーツで発散しなさいよ」
「サッカーやってるじゃねえか」
「あなたのサッカーはボール蹴ってるより喧嘩してる方が多いじゃない」
「･･････」
「この前の試合の時だって、相手チームのキャプテンを殴った上に、審判
にまではむかってたでしょ」
「あれはあいつが悪いんだ。わざと足引っ掛けたんだぜ。それでもつれあ
って転んだのを審判の奴、俺の反則だなんて言いやがって･･････」
「審判の言ったことは絶対なんでしょ」
「間違ってるもんは、間違ってんだ」
「もう･･････あなたサッカー向いてないわよ」
「ああ、うるせえなあ。お前は俺がどうすれば満足なんだよ」
「とにかく喧嘩だけはしないで」
「そんな約束できるかよ」
「約束してよ」
「じゃあ、お前もすぐ泣くのやめろ」
「どうしてよ」
「昨日、体育館で戦争の映画見た時、泣いてたのお前だけだぞ。みんな
お前のほう見てたじゃねえか」
「しょうがないじゃない。どうして泣いちゃいけないのよ」
「メソメソしてんの嫌いなんだよ」
「だって･･････」
「とにかくお前がその泣き虫をなおさない限り、俺も喧嘩をやめないからな」
「ずるいわよ」
「何がずるいもんか、男は常に強くなきゃいけないんだよ」
「どうして、そんなに強くなりたいのよ？」
「強くなきゃ、守りたいものも守れねえじゃねえか」
「何を守りたいのよ？」
「うるせ･･････」
