優しい人



「昨日、友達にあなたのこと聞かれたの」

「俺のこと？」

「彼氏どんな人って」

「なんて答えたんだよ」

「優しい人よって」

「ばかやろ。そんなこと言う奴があるか」

「どうしてよ」

「俺が全く取柄がないみたいじゃねえか」

「なんでよ、優しいっていうのは大切なことじゃない」

「あのなあ、好きな女に優しくねえ男がいるか？」

「そりゃまあ、そう言われればそうだけど･･････」

「優しいなんていうのは、他になんの特徴もない男

　のことを言う表現だぜ」

「そうかなあ」

「そうだよ」

「じゃあ、なんて言えばいいのよ」

「強い人とかさ」

「あなたが強いのは喧嘩だけでしょ」

「それじゃ、足が長くて、肩幅が広くて、鼻筋のとおって

　る男らしい人って言え」

「全然当てはまってないじゃない」

「そしたら、お前が思う通りに言えよ」

「そうねえ、それじゃあ･･････。意地が悪くて、笑い方が

　下手で、嫉妬深くて、無鉄砲で、往生際が悪くて、悲
　
　観的で、思い込みが激しくて、喧嘩っぱやくて、淋しが

　り屋で、人見知りで、調子に乗りやすくて、不器用で、

　愛嬌がなくて、面倒くさがり屋で、飽きっぽくて、

　落ち着きがなくて、口下手で、酒ぐせが悪くて、ついでに

　女ぐせも悪くて・・・・・・」

　「あ、あのさあ･･････」

　「え？」

　「やっぱり、優しい人でいいや･･････」