夜明け


初めてお前を見たときからこうなるような気がしていた

お前は手がつけられないほどグレていたし

俺は退屈をまぎらわすためだけに

族の下っぱに成り下がっていた

バイクにまたがると何もかも忘れられるような気がして

風に身を任せた

お前はバイクに乗っている姿がやたら似合っていたから

俺だけじゃなく仲間達みんながお前に憧れていたんだ

リーダーの女だと知っていても


お前が俺に優しさを見せ始めて

俺はただ脅えるばかりで

それでも仲間に隠れて口づけた時には

殺される覚悟さえできていた

リーダーの勝手さに飽き飽きしたと言って

俺に涙を見せた夜

俺はお前を抱いた

互いの首を絞め合うように抱き締めあった


午前２時　いつものように倉庫裏に集合がかかると

お前はリーダーに寄り添いながら

視線だけは俺に向けていた

エンジンをかけるとお前は

リーダーと並んで夜を駆け抜け

俺はいつも最後尾でサツを巻く役に徹していた

何かが違う　そう感じ始めたのもその頃さ

俺はいつしか仲間とも対立しはじめ

リーダーにも目をつけられていた

一度　ふたつ上の先輩とやり合って

お前が止めに入ってからは

仲間内で変な噂がたっていたのも俺は知っていた


昨夜のことだったね

お前が俺の部屋のチャイムを鳴らしたのは

そうさ２時間前のことさ

俺たちがベッドの上で果てたのは

今　俺はお前を誰よりも激しく見つめている

お前がまともな生活に帰りたがっていることなんて

分かっているさ

俺だってお前を奪うためには

このままじゃいられやしないんだ

いいかい　俺の覚悟はもうできている

お前も俺についてきてくれると誓ってくれるね

約束する

仕事を見つけて絶対にお前を幸せにしてみせる

分かるだろ　俺達はもう逃げも隠れもできないんだ

これからはずっと俺にしがみついているんだぜ

奴はもう俺たちのリーダーじゃない