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金網の向こうに

アドバルーンが見えます

パラソルの生えたテーブルひとつにつき

白いガーデンチェアーが四脚ずつ

隅には小さな鳥居と祠

いつもの風景です


今日はよく晴れていて

ソフトクリームの売れ行きも上々

サボタージュのセールスマンや

紙パックのいちごオ・レを飲むOLや

ベンチで眠る失業者が見えます

日々変わる風景です


やがてヒーローショーが始まります

黒タイツの悪者たちが登場して

子どもらが泣きだすところまでは

午前の部と同じですが

その隙に男の子がひとり

わたしの背中にまたがります


黒タイツは連れ去る相手を

親子連れの中から物色します

いかなる悪者であろうとも

ひとりわたしに乗る子どもを

無慈悲に舞台に上げたりはしません

いわばここは安全地帯です


ヒーローが悪者を倒し

誰もが四階の物産展に消えた後も

男の子は動こうとしません

ごめんね 何処へも連れてゆけないんだ

百円入れてくれたなら

二分くらいは揺らせるけれど


日が暮れはじめます

ゲームの電子音とカラスの声が

コンクリートの床にこだまします

男の子とわたしは黙ったまま

金網の向こうを見ています

モザイク模様の夕焼けです