愛Pod



果てて眠る長い黒髪を撫でながら

ぼくはまだ内に鳴り響く音を

かき消せぬまま起きている


この胸に詰まっている

幾万ものチューンを

さっきあなたと繋がっていたときに

丸ごと転送できたなら

ぼくらはすっかり同期して

同じ思いでいられたろうに


ぼくのあたためているうたは

澄んだメロディばかりでなく

疑いに汚れたリフレインや

嫉妬に乱れたリズムが織りなす

できそこないのバラードだけれど


幾千の夜を繋がり合っても

USBにも及ばぬほどぼくら

わずかなことしか伝えあえず

ヴォリュウムの調節はおろか

早送りも巻き戻しもできないなんて


遠き楽園でアダムとイヴが

禁断のアップルを齧った日から

この欠如は男と女に

宿命づけられていることなのか


ぼくはあなたの左胸に耳をつけ

アナログで鳴る鼓動を聴く

どんな夢を見ているのか

知るすべもないまま