番長



夕ぐれの土手に番長がいる

着古した学ラン すり切れた学帽

腰には手ぬぐい 素足に下駄で

芝に腰かけ 草笛吹いて


その分かりやすい見かけどおり

番長は陰でコソコソしない

堂々と偽善にツバを吐き

決闘は河原で一対一


規律は守らず 素行不良で

先生たちは手を焼くが

約束は守り 人情にあつく

正義より仁義を重んずる


腕っぷしが強いと評判なのは

荒くれ者をとっちめるからで

弱い者をいじめるヤツなど

番長は決してゆるさない


子分たちの面倒見はいいが

番長は無駄につるまない

女の子にもモテるのに

放課後はひとり土手にいる


番長には番長なりの

人知れぬ悩みもあるんだろう

ほころんだ学ランの背中で

一身に夕日をうけとめて


かけよってくる近所の子らに

番長は照れながら教えている

空たかくまでひびきわたる

草笛の吹き方を